茨木童子
- 分類
- 語彙
- モチーフ
- 鬼・帰還・供犠
茨木童子(いばらきどうじ)とは、酒呑童子の子分、あるいは義兄弟のように語られる鬼である。都で腕を斬られる羅生門の説話などで知られる。見ず知らずの他人に対しては兇暴無類であったと伝えられる。
だが、その出自と、親をめぐる伝承には、鬼の名に似合わぬ情がある。
捨てられた子
摂津国川辺郡東富松の部落に残る伝説――『摂陽群談』による――では、茨木童子は生まれながらにして牙が生え、髪が長く、眼が光り、力が強すぎた。そのため一族に恐れられ、茨木のあたりに捨てられたという。それを、丹波千丈岳の強盗であった酒呑童子が拾い、養育して賊徒にしたと伝えられる。
異相ゆえに、生まれた家から棄てられる。この構造は、コトリバコの作中設定が下敷きにする「間引き」や「鬼子」の忌避と、同じ根を持つ。
帰ってくる鬼
しかし物語は、そこで終わらない。
後年、茨木童子は、親が病に臥せっているのを術によって遠くから知り、心配して見舞いに戻ってきたという。人に恐ろしい姿を見せまいと急いで飛び去った田圃道には、「安東寺」という字名が残った。その時、親が喜んで団子を食わせたことを記念して、村では毎年同じ日に「団子祭」が行われていたと伝えられる。
棄てられた者が、縁を切られてなお、戻ってくる。柳田國男は『山の人生』で、この見舞いの挿話を、松崎のサムトの婆の例に連ねている。異界へ去った者が、ふたたび里に現れる――その系譜のなかに、茨木童子もまた置かれているのだと読める。
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出典
柳田國男『遠野物語・山の人生』岩波文庫(青138-1)、1976年、ISBN 978-4-00-331381-7。『山の人生』一七「鬼の子の里にも産まれしこと」。本文中の『摂陽群談』は同書からの再引用。